「普通に座るだけ」でいい。月50名のストーマ患者を指導する皮膚・排泄ケア認定看護師が語る、ZA FREEという選択肢
某病院
導入前の課題
・「丸イスを使う」「逆向きに座る」といった指導方法が、自宅の狭いトイレでは再現しづらく、退院後の処理に困る患者様が多かった。
・本人やご家族含め、「ストーマの排泄には汚物流しが必要」という思い込みが根強く、便座型という選択肢を知る機会がなかった。
導入後の効果
・指導室への設置により、患者様が「便座型という選択肢」に自ら気づくきっかけに。自宅の便器に取り付けられるため、退院後の処理環境として具体的に検討できるようになった。
・ZA FREEの前広形状により「普通に座るだけ」でパウチの処理が可能になり、丸イスや逆向き座りといった無理な姿勢が不要になった。
A病院は、消化器外科や泌尿器科、産科婦人科など複数の診療科を擁し、ストーマの造設手術にも対応する地域の基幹病院です。月に約50名が訪れるストーマ外来では、退院後の日常生活を見据えた排泄指導が日々行われています。
ストーマを造設した患者様が退院後に最初につまずくポイントのひとつが、「パウチの中身をトイレでどう処理するか」です。従来、病院での排泄指導には丸イスの持ち込みや汚物流しの利用といった方法が用いられてきましたが、いずれも自宅の普通のトイレでは再現できないものでした。
この病院と自宅のギャップを埋める手がかりとして、同院のストーマ外来指導室に設置されたのが、さつき株式会社の前広便座「ZA FREE(ザフリー)」です。
今回は、同院でストーマ外来を担当する皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)のB様に、ZA FREE設置前後で変わった排泄指導の現場についてお話を伺いました。
排泄指導が抱えていた「自宅で再現しづらい」という課題
―皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)としてのB様の業務内容や、オストメイトになる方への向き合い方について、お伺いしてもよろしいでしょうか?
B様:私は、ストーマに関しては病院内で管理者的な立ち位置になります。この病院にはストーマ関連で月50名ほど患者様が来院されますが、基本的には術後のケアは病棟の看護師が対応しています。 しかし、例えば管理困難やWストーマなど豊富な経験が必要になる難しい症例では、私が必ず業務に入っていますね。
また弊院では、退院して初回には必ず全員ストーマ外来にかかってもらっていますが、やはり皆さんそこで具体的な質問や疑問が出てきます。実際に日常生活に戻って、「あ、これはどうしたらいいんだろう?」という場面がリアルに出てくる感じです。
そのため、これからストーマを造る予定のある方に対しては、「術後の日常生活をいかにイメージしてもらえるか」という視点で、しっかり具体的なお話をするように意識しています。当事者の方の傾向としても、「他の人はどうやっているんだろう?」「どういう方法がおすすめなんだろう?」という点を気にされている印象です。
オストメイトになってから本人の当事者としての自覚や悩みもはっきりとしますので、術後、退院後の周りのサポートや情報収集の重要性は高まるなと感じます。
―ストーマ外来での排泄指導において、以前はどのような課題がありましたか?

排出方法によっては、無理な姿勢をとってしまうことも
B様:「教えている排泄処理の方法が、患者様の自宅では再現できない場合がある」という点はずっと気になっていました。
病院のトイレは広いため、便座の前に丸イスを置いて、便器に向かい合う形でパウチの排出を指導する看護師さんもいらっしゃいます。ただしこのやり方は、自宅の狭いトイレでは実践しづらいというのが難点です。
患者様からも「パイプ椅子を持ってくるのが面倒だから、便座に逆向きに座って処理していた」「立って処理している」というお話をよく伺います。
ただ、逆向きに座るのはとても不安定ですし、ご高齢の方が立って処理すると転倒のリスクがあるため、決して安全とは言えません。
退院後に日常生活に戻って「うちのトイレではどう処理すればいいんだろう」となる方が多い印象です。
―既存のオストメイト対応設備では解決できなかったのでしょうか?

汚物流しでは高さが合わないことも多い
B様:公共施設にあるような汚物流しは、そもそも自宅に設置できるものではありませんし、高さが合わない患者様がすごく多いんです。背の高い方だと跳ねてしまうし、小柄な方や車椅子の方には高すぎます。
ですので、私は基本的にオストメイト対応設備は「ない」とみなして指導をしています。普通の便座に普通に座って処理できるように、というのが基本方針です。対応設備はサービスエリアやショッピングモールには増えてきましたが、どこにでもあるわけではありませんよね。
設備の設置状況から見ると、オストメイト対応設備でやり慣れてしまうと、ない場所では対処できなくなってしまいます。そのため、普通の便座を使うことを指導では徹底していますね。災害時でも困らないようにということも想定しています。
ただし、従来の丸い便座だと前方が狭く、変わらずやりにくさはあるというのが実情でした。
知らなかった選択肢に気づく。ZA FREE設置後の指導室に起きた変化
―指導室にZA FREEが設置されてから、どのような変化がありましたか?
B様:「便座に座って処理」という指導の基本方針は変えていませんが、患者様が自ら「選択肢」に気づくようになったのは大きな変化だと思います。
ストーマの排泄設備というと、多くの方は公共施設にあるオストメイト対応トイレの「汚物流し」をイメージされます。調べても出てくるのは主にそのタイプなので、「これを家につけなきゃダメですか?」と聞いてこられる方もいるくらいなんです。
指導室にZA FREEが置いてあると、便座型の設備もあるんだと自然に気づいていただけるのが大きいですね。
―患者様からの反応はありますか?
B様:指導室に置いてあると自然と目に入るようで、「この便座は何?」と聞いてこられる方もいますし、実際に座ってみて「家のより圧倒的にやりやすい」とおっしゃって、自宅に導入した方もいらっしゃいました。
以前は逆向きに座って処理していたという方でも、「これなら普通に座ってできる」と気づくきっかけになっています。
外来にいらした患者様には、時間があればこういう選択肢もありますよとお伝えするようにしています。捨て方の質問はやはり多いので、そうした機会は自然とありますね。
―医療従事者の目線で、他にZA FREEによって変化しそうな部分はありますか?
B様:高齢者の方であればケガのリスク解消や、また感染リスク対策に適していると思います。
ストーマを造設される方は70代、80代が多いので、立った姿勢や中腰での処理は転倒のリスクが伴います。
また、耐性菌を保有している患者様も増えていますから、不特定多数の方が使うトイレでの菌の飛び散りにも注意が必要です。その点、高さが合わないまま使う汚物流しでの処理や、トイレに向かって立った姿勢での処理は、感染対策の面ではリスクとなりえます。
ZA FREEで座ったまま、便器内にそのまま処理できるというのは、患者様の安全と院内の感染対策の両面で大きな意味があると感じています。
「普通のトイレに入りたい」。その想いに応える設置のあり方

看護師のB様とさつき社員
―どのような医療機関にZA FREEをおすすめしたいですか?
B様:普通の個室トイレに設置できる施設なら、どの医療機関にもおすすめできますね。
病院では特にですが、バリアフリートイレは車いすの方や補助が必要な方などかなりの頻度で使われます。そのため、オストメイトの方はわざわざバリアフリートイレには行かないんです。
基本的に普通のトイレを使用しますので、ZA FREEも普通の個室トイレに設置した方が本来の利用者には届きやすいのではと感じています。
また、オストメイトの方は、見た目ではそうと分からない分、普通に過ごせることを求めている方が多いんですよね。他の人と変わらない生活がしたいと考えていらっしゃるので、「今まで通り、普通のトイレに入りたい」という想いに応えることが大事だと考えています。
そのような想いに応えられるように、普通の個室トイレでの普及が進むといいなと思います。
■取材ご協力者様
A病院 皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)のB様